
の設置が船舶交通にどう影響を及ぼすのか等について、現状の通航船舶実態を基礎資料としたシミュレーションが揚げられます。 ?安全規制(Enforcement) 車と人が混在する道路交通と、船舶だけが移動する海上交通との間には、交通機関の構造又はその態様に本質的な差異があるため、それぞれが準拠すべき交通法規にも質的な違いがあります。したがって、両者問に取締りの面で差のあることは否定できません。 すなわち、陸上交通における交通関係法規は、「交通」を中心として非常にキメ細かく整備されていますが、海上交通にあげる交通法規としては、船舶の「運航技術の操典」といった色彩の濃い「海上衝突予防法」のほか、港内又は特定水域における「特定航法」を定めた交通規則「港別法」及び「海上交通安全法」があるだけです。なお、「海上衝突予防法」には、罰則の規程はありませんが、注意を怠って生じた結果について、責任を免除するものではないとしています。一方、海上交通においては、船舶は水に浮かぶものでありますから、その構造面の安全規則は、自動車などにおけるよりも、よりキメ細かに整備され、かつ、より厳しい検査体制が取られています。例えば、船舶安全法、漁船法といったものです。また、乗組員の技能・能力、規律等に関し、船舶職員法、船員法といったものもあります。 したがって、前述の「交通取締り」を「安全規則」という用語に置き換え、単に交通だけでなく、船舶にかかるすべての「安全基準とその励行」という広義の内容のものとして考えてみると、これもまた、海難防止対策の一つの大きな柱になります。 ?交通環境(Enviroment) 交通環境の整備改善は、道路交通においても海上交通においても、等しく重要な問題です。環境とは、いわゆる「まわり」という広い概念で、船舶が航行する環境や操船者環境といったものです。しかし、環境は、前述の教育や工学の考え方とオーバーラップすることもあり、逆に、教育や工学を考えるうえで環境を考慮することが重要となってくる場合もある等、他の三つのEと密接な関係にあります。 例えば、船舶の航行は、自然条件、航路条件、交通条件がからみあい、しかもそれらが変化する環境のもとにおかれています。したがって、陸上の道路交通における道路構造の改良、交通管理施設の改善、交通保安施設の整備といったような具体策を、そのまま海上交通に当てはめることは出来ません。なぜかというと、陸上交通の環境と海上交通の環境には、本質的な差があるからでは。しかし、海上交通においても、ある特定の海域における海難の発生率が他の場所に比べて著しく多いという事実があれば、やはり、その海域における航行環境条件の中に、何か海難発生の条件がひそんでいると見るのが正当であろうと思われます。特定の地点に乗揚げ海難が多発している場合、事故原因を注意深く分析してみると、海図に記載されている航路筋の状況、言い換えれば、航海者がその海図を見て予期する状況と実状が大きく違っていることとか、あるいは航路標識の改変の情報が航海者の手に届いていないようなことも考えられます。このような海難を防止するためには、障害物の除去という直接措置はともかくとして、地形の誤認を防ぐための航路標識の整備、海図の図示方法の改善あるいは情報伝達方法の再検討といった具体策が必要と思われます。 また、特定の狭水道等の船舶交
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